事務局だより 2023年5月号

アーバスキュラー菌根菌(AMF)は、菌根菌の中でも4億6千万年前という非常に古い時代から地球に生きていて、ほぼ全ての植物と共生する有益微生物です。このAMFの力を借りて元気に植物を育てようという栽培方法が菌根菌農法です。

AMFは植物の根っこの先について菌糸を伸ばしていきます。
植物の根っこだけでは届かない範囲の栄養素を吸収して植物に届けてくれます。
一方、AMFは植物が光合成をすることでできた糖分などをもらっていてWIN-WINな共生関係にあります。

圃場のあちこちにある窒素・リン酸・カリなどの肥料分を吸収してくれるので、圃場に入れる肥料分は少なくて大丈夫です。
むしろ肥料が多いとAMFが“自分が頑張らなくても植物たちは困らないね”と判断してあまり働いてくれないそうです。
ですので肥料の節約になります。

またAMFの胞子内やその周辺にはAMFと仲良く生きているパートナー細菌(PB)がいて、この中には耐病性や耐虫性をアップしてくれる種類のPBがいます。
AMFやPBが水田や畑にたくさんいてくれることで虫や病気から植物たちを守ってくれる強い水田や畑になるのです。

日本菌根菌財団ではAMFやPBが入ったいろいろな資材が用意されています。
土に混ぜ込む菌根菌とPB(菌根菌資材)、PB入りの有機液肥(有機液肥)、菌根菌とPBが入った堆肥(菌根くん)などです。
資材の使い方については、ブログの後半に昨年一年間菌根菌を使った経験から作成した資料を添付してますので、ご覧ください。

有機液肥1つで肥料にも虫や病気対策にもなり、使う人にも優しく、マスクやカッパなどで防御する必要はありません。またかけすぎても植物たちの害にはならず土に落ちたPBは土で活躍してくれます。

ですので私のような初心者でも安心して使えます。
畑でそういった人に優しいもので野菜たちを元気に育てられるから、食べて優しい野菜たちが育ちます。

有機の資材は高額なイメージがあるように耳にしますが、昨年1年使ってみて、いろいろな化学肥料や農薬を使うより安いと思います。
これらの資材の保存も室内の冷暗所や冷蔵庫の野菜室に入れておくだけなので簡単です。

AMFやPBが畑や水田でうまく増えていってくれれば、それらの圃場ではきっと守られた強い畑や水田になることでしょう。
そうなればもっと楽に農業を続けられると私は思っています。
安心・安全で地球にも植物たちにも人にも優しい、まさにSDGsな農業です。

日本菌根菌財団のHPや石井先生の著書に、菌根菌とそのPBに関してのお話が詳しく書かれていますので、ぜひのぞいてみてくださいね。

菌根菌資材の使い方

菌根菌とその仲間たちの使い方

  • ・畑にすきこむ場合
    ・油粕で希釈して畑全体にまいてすきこんでください。
    ・牛糞堆肥をまく時と同じタイミングで大丈夫です。
    ・使用量の目安: 10a当たり 菌根菌100gを2~3袋
  • ・セルトレーやポットに種をまく時に入れる場合
    ・土に油粕で希釈した菌根菌を混ぜて使います。
    ・菌根菌の量の目安
    1苗に菌根菌2~5個となるよう計算します。
    資材の菌根菌には1gで約100個の菌根菌がいます。
    【例】128穴のセルトレー10枚の場合
    128穴×10枚=1280苗
    1280苗×菌3個=菌3840個
    菌根菌40gで約4000個の菌根菌がいますので、それを油粕で希釈して土に混ぜます。

    左: 油粕と菌根菌、この状態でよく混ぜます

    右: 土に入れて更によく混ぜます

    ・土の準備後すぐに種まきができない場合もあると思いますが、日数が経過しても問題ありません。
  • ・畑に直接種をまく場合
    ・種をまく際に、油粕で希釈した菌根菌をパラパラと一緒に入れてください。
  • ・残った菌根菌の保管
    ・しっかり封をして冷蔵庫か、冷暗所で保管してください。
    ・なるべく早く使い切ることをおすすめします。
  • ・菌根菌栽培で使う水はカルキ(塩素)が入っていない水をご使用ください。
    ・井戸水がない場合は水道水を汲んでおけば数日でカルキは抜けます。
    菌根菌栽培で使う水

有機液肥の使い方

  • ・使い方
    ・水で薄めて使いますが、使う水はカルキ(塩素)が入っていない水をご使用ください。
    ・かけるイメージは葉面散布で葉っぱがしっかり濡れる程度にかけます。葉の裏までは意識しなくて大丈夫です。落ちたしずくのPBは土で活躍してくれます。
    ・水で薄めた液肥はその時に使い切ってください。
  • ・保管方法
    ・冷蔵庫(野菜室など)か、冷暗所で保管してください。
  • ・雨が降る前より雨上がり、朝夕の気温があまり高くない時間にかけてください。
  • ・定植後すぐに液肥をかけることで、作物が根を張る力を与え、耐虫性アップの期待ができます。
  • ・定植後に作物にかける水など、畑で使う水はカルキ(塩素)が入っていない水をご使用ください。
  • ・作物の状態が安定していれば200倍に薄めた液肥を1~2週間おきにかけます。
  • ・虫の害が心配な時は100~150倍の液肥を週2回などかける回数を増やすと耐虫性アップの効果が期待できます。
  • ・PB入りの有機液肥の特徴
    ・液肥の濃さを変えることで元気な状態を維持したり、耐病性、耐虫性アップの効果が期待できます。
    ・もし作物が液肥を欲していないのにかけたり、多くかけすぎても作物に害はなく落ちたPBが土に入るだけですので、慣れていない方でも安心してご使用いただけます。
有機液肥

菌根くんの使い方

  • ・菌根くんは菌根菌が入っている堆肥なのでそのまま畑にまいてください。
  • ・牛糞堆肥を入れるときに菌根くんのいくらかを使っても大丈夫ですので、牛糞堆肥をまくときに菌根くんもまいてすきこんでください
  • ・財団では鶏糞、豚糞は使用しないようお話しています。
菌根くん

日本菌根菌財団のHPにメールアドレスもありますのでお気軽にお問い合わせください。
もしいきなり財団に連絡はちょっと…という方は、私にコメントいただければ、可能な範囲でお答えさせていただきます。
ご興味がある方はお気軽にお問合せくださいね。

私は農業の超初心者ですが、そんな私の質問にも優しくお返事いただけますので大丈夫です。
詳細については(石井孝昭「菌根菌の働きと使い方」農文協)を一読ください。