発明と新技術

菌根菌の見える化技術

菌根菌、特にAMF等の菌糸は透明で肉眼では観察できないため、トリパンブルーという染色液等で根を染色してから顕微鏡下で観察する方法が現在でも広く用いられています。この方法では観察結果を得るのに最低1日はかかり、かつ他のカビとの区別が難しいことから専門知識も必要です。

菌根菌

キク根のAMF共生

蛍光を発するところが菌根菌です。

茶園における土壌中の菌根菌

茶園における土壌中の菌根菌

左:慣行茶園 中:放任茶園 右:有機茶園

この新技術では、採取した根や土壌に世界初の菌根菌検査薬を極少量処理し、直ちに蛍光顕微鏡下で蛍光部位を観察することで、菌根菌の有無を瞬時に調査できます。この検査薬は菌根菌しか存在しないタンパク質の発見から作り上げたものです。

また同時に、持ち運びができ、携帯電話のカメラで撮影できるハンディー蛍光顕微鏡装置も開発しました。

新開発の菌根菌検査薬とハンディー蛍光顕微鏡装置

世界初のアーバスキュラー菌根菌の純粋培養

菌根菌の純粋培養は不可能と言われてきましたが、私たちは今から10数年前に宿主の根や根抽出物を全く用いない人工培養基内で、AMFの純粋培養を世界に先駆けて成功しました(特許第4979551号, 2007; 特許第6030908号, 2012)。詳細については、「アーバスキュラー菌根菌の純粋培養技術の確立」(菌根菌ジャーナル 2(1): 8-19)をご覧ください。

現在、筆者らのAMF純粋培養技術は充実したAMF胞子を大量に生産できる事業化レベルの段階にありますが、宿主植物による安価で大量に胞子を生産できる技術も確立しているので、現時点では純粋培養による胞子生産の事業化は控えているのが現状です。しかし、純粋培養では土壌を一切使っていないので、国外にAMF接種源を輸出できるという利点があります。また、植物工場などの施設栽培で病原菌などの侵入が危惧される場所ではAMFとそのパートナー細菌の利用は大いに役立ちます。現在、菌根菌の有効性が徐々に認知され始めているので、AMFの純粋培養の事業に着手していかなければならないと考えています。

さらに重要なAMFの純粋培養技術の活用場面として、AMFを遺伝子組み換え(GM)作物による汚染から防ぐための保護技術があげられます。わが国や世界のAMFがGM作物に汚染されないように、また化学合成農薬や化学肥料の使用によって多様性が失われないように、自然から授けられた宝であるAMFを、未来の人々のために保存しておかなければならないと考えています。古くから地球に存在し、私たち人類や動物の生存を助けてくれたAMFを守るためにも。

近い将来、私たちはこの純粋培養技術を活用して、AMFを守るためのジーンバンクを創設してみたいと思っています。ご協力の程、よろしくお願い致します。

アーバスキュラー菌根菌の純粋培養に成功

世界初の有機水耕栽培

AMF、PBおよびパートナー植物(PP)を活用した世界初の有機水耕栽培

養液中の無機成分が少なくても生育が旺盛で、環境ストレス耐性や病害虫抵抗性が付与されるとともに、藻の発生も少なくなります。

有機水耕栽培01
有機水耕栽培02
有機水耕栽培03
有機水耕栽培04
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有機水耕栽培09

植物オイル粉末 〈安心・安全な植物保護剤〉

菌根菌とパートナー細菌等が生息している植物は、病害虫に対して強くなりますが、植物オイル粉末を併用することでさらに効果が安定します。

安心・安全で、すてきな芳香をもつ素材で作られているので、ハウス内で心地よい植物保護剤として利用できます。また、害虫を忌避したり病気を抑制する力を利用して植物の成長を保護する働きがあります。トイレ、畜舎などの消臭剤としても有効です。

植物オイル粉末

新しいクロマトグラフの開発 〈分散系クロマトグラフ〉

新開発のクロマトグラフ(分散系クロマトグラフ)によって、微生物、特に細菌等を生きたままで分取でき、細胞小器官の分取も可能です!!

現在、微生物や細胞小器官を効果的に分離できる有効な方法がありません。特に、微生物の分離では培地上で生長の良いものだけしか分離できず、生長が悪いものや全く生長しないものを見落としているのが現状です。

また、作物増産や環境修復に非常に重要な共生微生物であるアーバスキュラー菌根菌(AMF)は多くの核をもっていますが、多型であるため、様々な核の中からAMF本来の核を分取しなければ、AMFのゲノム解析ができたとは言えません。

本財団のトップページに示すAMFの根への侵入の写真に見られるように、AMFによって根は全く傷害を受けていません。AMFは植物の核を奪い、核情報を得て、その情報(根への侵入キー)を自身の核の中に保管しているため、容易に根に侵入できるものと考えています。そのため、AMFの核は多型なのでしょう。

この素晴らしいAMFの能力が、植物がいろいろと進化しながらも、4億6千万年前から生き延びて、私たちの自然環境を守ってくれていると気づいていただきたいと願っています。

そこで、石井はこれらの問題を解決するため新規のクロマトグラフの開発に着手し、微生物や細胞小器官の分取に成功しました(特許第5634339号)。

ここでは、この世界初のクロマトグラフ(分散系クロマトグラフと商標登録)による微生物、例えばカイメン中に生息する微生物の分離などについて紹介します。

カイメン(Axinella cylindratus Hoshino) 中の微生物の分離
カイメン(Axinella cylindratus Hoshino) 中の微生物の分離(微生物の種類・微生物の特性)

分散系クロマトグラフィーで分取された液をそのままDNAシーケンサーにかけたところ、49種類の微生物のうち、41種がすべてカイメン中に生息していることが知られている微生物でした。その内、培養が困難な微生物も分離できました。また、これら以外の5種は新規の微生物として分取されました。なお、これらの微生物は生きたままで分取できるので、すべて保管できています。このように、本クロマトグラフは微生物の分離技術を一変させる力を秘めています。

菌根菌とコーティング種子

福岡正信(1975)の著書「わら一本の革命. 春秋社」には、泥団子が出てきます。つまり、数種類の種子を仕込んだ泥団子を畑に撒くと、ただ種子を播くよりも乾燥に耐え、虫や鳥に種子を食べられにくく、かつ畑の状態に合った品種のみが発芽するので、原始的ながら画期的な仕組みです。

現在、さまざまなコーティング種子が販売されていますが、その多くは化学合成農薬や合成着色料が含まれ、またコート資材として自然では分解されにくいプラスチックポリマーが用いられています。これでは、有機栽培や自然栽培で使用できませんし、菌根菌の根への感染も阻害されます。元来、種子は菌根菌を引き寄せる物質、つまりトリプトファンダイマーというペプチドを種皮に貯めており、発芽時にこの物質が土壌に溶出され、菌根菌を活性化させて引き寄せるメカニズムを持っているのですから。

そこで財団では、種子本来の力を発揮できるように、菌根菌胞子とそのパートナー細菌、並びに菌根菌生長促進物質などを含有させた泥団子手法、もとい、安心・安全なコーティング種子技術を開発しました(特許出願中)。この技術で様々な種子をコーティングできますので、興味・関心のある方は財団にご連絡ください。

菌根菌とそのパートナー細菌、並びに菌根菌成長促進物質入りコーティング種子