菌根研究における問題

JSTにおける「アーバスキュラー菌根菌の純粋培養に世界で初めて成功」の問題について

今から10数年前に、財団の石井孝昭理事長らは宿主の根や根抽出物を全く用いない人工培養基内で、アーバスキュラー菌根菌(AMF)の純粋培養技術の開発にすでに成功しています(特許第4979551号, 2007; 特許第6030908号, 2012)。

しかし、最近、Kameoka et al.(2019) は、パルミトレイン酸という脂質を含む培地で、またSugiura et al.(2020)は、ミリスチン酸という脂質を含む培地で、Rhizophagus irregularis という遺伝子変異が起きているAMFを用いて、「AMFの純粋培養に世界で初めて純粋培養に成功」したとJSTのホームページで吹聴しています。下記にそれらの論文を示します。

Kameoka, H., Tsutsui, I., Saito, K., Kikuchi, Y., Handa, Y., Ezawa, T., Hayashi, H.,Kawaguchi, M. and Akiyama, K. 2019. Stimulation of asymbiotic sporulation in arbuscular mycorrhizal fungi by fatty acids. Nature Microbiol. DOI: 10.1038/s41564-019-0485-7.

Sugiura, Y., Akiyama, R., Tanaka, S., Yano, K., Kameoka, H., Marui, S., Saito, M., Kawaguchi, M., Akiyama, K. and Saito, K. 2020. Myristate can be used as a carbon and energy source for the asymbiotic growth of arbuscular mycorrhizal fungi. PINUS 117: 25779-25788.

しかし、石井らは、すでにミリスチン酸、パルミトレイン酸などの脂肪酸を含む単純脂質や、これらを構成脂肪酸とする糖脂質およびリン脂質はAMFの菌糸生長や菌糸分岐の促進、ならびに胞子形成の誘発に関与していることを明らかにしています。特に、リン脂質の効果は顕著でした(Ruttoら, 1999)。L-α-ジミリストイル・ホスファチジルコリンの10 ppm添加区では、Gigaspora margarita の菌糸長が対照区のおよそ4倍になったことも報告しています (柴田ら, 2005)。

このように、Kameoka et al.(2019)およびSugiura et al.(2020)は、石井らの前述の脂質に関する論文や特許(石井・堀井, 2007; 石井, 2012)の成果を全く引用せず偽装し、かつ盗用の疑いがかけられる行為を行うとともに、石井らの研究成果を隠蔽し不正にわが国の研究予算を獲得する行為を行いました。特に、Sugiura et al. (2020)の論文中の齋藤雅典は国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)のACCELプログラム「共生ネットワークの分子基盤とその応用展開(代表:川口正代司)」のプログラムマネージャー(当時、JST。現在、東北大学教授)であったので、今回のような研究不正行為に対して指導するべき任を怠ったと言えます。

財団として、この研究不正行為をこれまでに文科省、JSTおよび関係大学に報告していますが、関係大学には全く自浄能力がないのが現状です。これが、わが国の不正論文数が世界一であると海外で報道されるゆえんと思われます。

石井の著書「菌根菌の働きと使い方. 農文協」における「研究者としての心構え」の中で、「Doctor」という英単語には「Falsify(書類などを偽装する。事実などを偽る。)」という奥深い意味もあることを紹介しています。この論文に関係するDoctorsは、まさに事実を偽って、外部資金の獲得や人事案件などの優位性を高めようとしていると言えます。

この研究不正行為の詳細については、「アーバスキュラー菌根菌の純粋培養技術の確立」(菌根菌ジャーナル 2(1): 8-19)に記載していますので、ぜひご覧ください。